Mosir Artworks(モシリ・アートワークス)

スペイン川歩き Ep.1 / Girona

更新:2024/08/21

海外フライフィッシングトリップ 1ヶ国目は、陽光の瞬くスペインからスタート。

東ピレネー山脈を水源とし、カタルーニャ地方の北部を流れる Rio Ter を目指し、古都 Girona へ向かう。

南フランスとの グラデーション

Girona the old city

スペイン滞在中の拠点である Benicarlo から車を走らせること3時間半・260 km の道のりを経て、カタルーニャ地方の北部にある Girona という街に到着した。

フランスとの国境までは 70km という地点にあるこの街は、Valencia などの建築物に比べると、建物の壁や柵などに見られる ’あしらい’ が控えめな建物が多い印象だった。

それは決して地味ということではなく、石造りや赤土のレンガなど、素材のミニマルな美しさに重きをおいているような気がした。古都・Girona という表現が、とてもしっくりくる。

また、街中では Merci という言葉が聞かれたり、Valencia 県とは同じ意味でも異なる綴りの単語があったりと、なんとなくフランスっぽさが見られるのが面白い。(単語はカタルーニャ独自の表現だろうか。)

今回の釣旅の目的である Riu Ter は、東ピレネー山脈からカタルーニャ北部を流れ、この Girona の街中も経由している。

街の中心地を跨ぐ橋に立ってみると、なるほど、それが街の景色を逆さに映す '映え装置' として機能するとともに、コイやカモなどの生息域を提供していることが分かる。

南フランスと同じ水源を分かち合い、豊かな自然がすぐそばにあり、文化的にもフランスとのグラデーションが見られるこの街の雰囲気に惹かれる人は多そうだ。

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ベニカルロやバレンシアとは異なり、質素ながらも美しい雰囲気の建築物が多い。また、食についてもフランスからの流入が多そうだ。街の中心地にあるフランス発の洋菓子店「CASA CACAO」では、ベリーを思わせる濃厚なチョコレートを体験した。10月のパリ / トゥールーズ旅行への期待が一層高まる。
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甘い期待

River Patrol

合計4泊の滞在予定で、3日目には雨予報を確認していたため、早々に川の調査へ向かう。

Girona から車で10分ほどの最初のポイントは、川に沿ってランニングロードが整備されており、入渓地点としてメドを立てていた。

現地に到着し軽く下見をしていると、予想通り、釣り人が出入りしたであろう藪漕ぎポイントを見つけたため、支度を済ませて入渓を開始。

河岸にはワラビの仲間と思われる植物が生い茂っており、北海道の川では感じたことのない匂いが鼻腔を喫えていく。

小さな瀬が見えてきたところでタックルを組み立て始め、フライの選定をする。

この時期のスペインは、18時ごろでもまだまだ陽が高い。

27 ℃前後の立っているだけでも汗ばむ天気の中、ミッジサイズの虫がわずかにハッチしている状況。

ざーっと上流まで見渡すもライズはない。ひとまず10番のニンフを結び、ポイントを探っていく。

海外で初めての釣行という現実に浮き足立つ気持ちを抑えながら、丁寧にキャストしていく。

川からの反応はなく、じっとりと垂れる汗を拭いながら、歩を進めていく。


ある程度上流に進んでいくと、木陰のかかるプールを見つけた。

いったん、土手に上がって、深場を見つめていると、50cmに満たないくらいのブラウントラウトと思しき御影を発見した。

定位している場所を見定め、また下流に戻って、対岸からポイントににじり寄っていく。ニンフィングでアプローチを試みる。


しかし、いくらニンフを流そうとも反応は得られなかった。

サイズを12番に下げても、カラーリングの違うパターンを試しても、奥の手 Squirmy Worm を投入しても、すんとしたままの川。

打開策を見出すこともできないまま、いたずらに時間だけが過ぎていき、この日は終了。

下流〜中流域はコイが牛耳っており、上流にさしかかるとブラウントラウトの魚影が濃くなる Riu Ter。6月のスペインは22時までは釣りが可能なほど明るいため、必然的に魚たちも日陰で過ごす時間帯が非常に長そうだ。
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鼻先無視雄

翌日。

昨日と同じポイントで、やはり同じように定位するブラウンを発見。オマケでもう1匹、同じサイズも確認した。番いだろうか。

ハッチも昨日と同様にミッジサイズがちらほら。


曇り空ということもあり、昨日とは違う茂みの後ろでポジションをとり、Bow & Arrow でキャストを試みる。

幸運にも良い角度で投入できた。

ニンフが鼻先までゆったりと流れていく。


食え。食え。食、ぇ、、。


食わない。


もう一度同じようにキャスト。

しつこく鼻先までニンフを流す。

やっぱり食わない。


流しているフライがマッチしていないことは明白だった。

とはいえ、日本から持参していたニンフはすでに全て試してしまった。ドライも数回投げてみたが、やはりフル無視。


1時間粘るも、この "鼻先無視ブラウン" たちは諦め、他のポイントへ。


しかし、やはりアリモノのフライに食いついてくるような魚はいなかった。


日本からの長い道すがら、抱いてきた甘い期待は、あっけなくとけて無くなってしまった。

曇天は一層濃くなり、夜になると、Girona は雨に包まれていった。

(続く)