スペイン川歩き Ep.1 / Girona
海外フライフィッシングトリップ 1ヶ国目は、陽光の瞬くスペインからスタート。
東ピレネー山脈を水源とし、カタルーニャ地方の北部を流れる Rio Ter を目指し、古都 Girona へ向かう。
南フランスとの グラデーション
Girona the old city
スペイン滞在中の拠点である Benicarlo から車を走らせること3時間半・260 km の道のりを経て、カタルーニャ地方の北部にある Girona という街に到着した。
フランスとの国境までは 70km という地点にあるこの街は、Valencia などの建築物に比べると、建物の壁や柵などに見られる ’あしらい’ が控えめな建物が多い印象だった。
それは決して地味ということではなく、石造りや赤土のレンガなど、素材のミニマルな美しさに重きをおいているような気がした。古都・Girona という表現が、とてもしっくりくる。
また、街中では Merci という言葉が聞かれたり、Valencia 県とは同じ意味でも異なる綴りの単語があったりと、なんとなくフランスっぽさが見られるのが面白い。(単語はカタルーニャ独自の表現だろうか。)
今回の釣旅の目的である Riu Ter は、東ピレネー山脈からカタルーニャ北部を流れ、この Girona の街中も経由している。
街の中心地を跨ぐ橋に立ってみると、なるほど、それが街の景色を逆さに映す '映え装置' として機能するとともに、コイやカモなどの生息域を提供していることが分かる。
南フランスと同じ水源を分かち合い、豊かな自然がすぐそばにあり、文化的にもフランスとのグラデーションが見られるこの街の雰囲気に惹かれる人は多そうだ。
甘い期待
River Patrol
合計4泊の滞在予定で、3日目には雨予報を確認していたため、早々に川の調査へ向かう。
Girona から車で10分ほどの最初のポイントは、川に沿ってランニングロードが整備されており、入渓地点としてメドを立てていた。
現地に到着し軽く下見をしていると、予想通り、釣り人が出入りしたであろう藪漕ぎポイントを見つけたため、支度を済ませて入渓を開始。
河岸にはワラビの仲間と思われる植物が生い茂っており、北海道の川では感じたことのない匂いが鼻腔を喫えていく。
小さな瀬が見えてきたところでタックルを組み立て始め、フライの選定をする。
この時期のスペインは、18時ごろでもまだまだ陽が高い。
27 ℃前後の立っているだけでも汗ばむ天気の中、ミッジサイズの虫がわずかにハッチしている状況。
ざーっと上流まで見渡すもライズはない。ひとまず10番のニンフを結び、ポイントを探っていく。
海外で初めての釣行という現実に浮き足立つ気持ちを抑えながら、丁寧にキャストしていく。
川からの反応はなく、じっとりと垂れる汗を拭いながら、歩を進めていく。
ある程度上流に進んでいくと、木陰のかかるプールを見つけた。
いったん、土手に上がって、深場を見つめていると、50cmに満たないくらいのブラウントラウトと思しき御影を発見した。
定位している場所を見定め、また下流に戻って、対岸からポイントににじり寄っていく。ニンフィングでアプローチを試みる。
しかし、いくらニンフを流そうとも反応は得られなかった。
サイズを12番に下げても、カラーリングの違うパターンを試しても、奥の手 Squirmy Worm を投入しても、すんとしたままの川。
打開策を見出すこともできないまま、いたずらに時間だけが過ぎていき、この日は終了。
鼻先無視雄
翌日。
昨日と同じポイントで、やはり同じように定位するブラウンを発見。オマケでもう1匹、同じサイズも確認した。番いだろうか。
ハッチも昨日と同様にミッジサイズがちらほら。
曇り空ということもあり、昨日とは違う茂みの後ろでポジションをとり、Bow & Arrow でキャストを試みる。
幸運にも良い角度で投入できた。
ニンフが鼻先までゆったりと流れていく。
食え。食え。食、ぇ、、。
食わない。
もう一度同じようにキャスト。
しつこく鼻先までニンフを流す。
やっぱり食わない。
流しているフライがマッチしていないことは明白だった。
とはいえ、日本から持参していたニンフはすでに全て試してしまった。ドライも数回投げてみたが、やはりフル無視。
1時間粘るも、この "鼻先無視ブラウン" たちは諦め、他のポイントへ。
しかし、やはりアリモノのフライに食いついてくるような魚はいなかった。
日本からの長い道すがら、抱いてきた甘い期待は、あっけなくとけて無くなってしまった。
曇天は一層濃くなり、夜になると、Girona は雨に包まれていった。
(続く)